世界には、理屈じゃ説明できないことがある。
意味もなく惹かれたり、不意に何かを感じたりするのは、そういうことなんだろう。
きっと、君と出会って、君を好きになったことも。
*******
教会は、すっかり人気が無く静まり返っていた。
黙ってついてきたが、思えばここに来てすることもなかった。
「ミニがさ、よく教会を見つめてるんだ」
懐かしそうに言うキュヒョンに、ソンミンは首を傾げる。
教会を見つめたことなんてないし、第一教会にあまり行かない。
どこかでぼそっと言ったかと思い記憶を辿るが、そんな記憶はない。
「僕、教会見つめたことないけど…」
ソンミンが言うと、キュヒョンはクスクスと肩を揺らして笑った。
どこか可笑しそうに、そしてもう、悲しそうではなかった。
キュヒョンに惹かれている。
それは、何故か当たり前のようにさえ感じる。
キュヒョンは一つ、大きな深呼吸をした。
「実はさ、もう、今日でここ出てくんだけど。」
「うん…」
「だから、ちゃんと言っておくから。」
キュヒョンはソンミンの手を引いて、ずかずかと教会へ入る。
やはり結婚式があったのか、ほんのりピンク色の一片の花びらが足元に寝そべっている。
そして、キュヒョンは鐘の真下に立つ。
一度見上げてから、思いっきり鐘を鳴らした。
柔らかな音色が、響いた。
「教会を見つめてたのは、九年後のミニ。」
「へ…?」
「僕らは結婚できないって言ってるのに、ずっと見つめてさ」
ますます意味が分からない。
九年後?結婚?キュヒョナは頭がおかしくなったんじゃないか?
ソンミンが難しい顔をして首を傾げていると、キュヒョンが言った。
「会いたいって、言ったんだ」
「え?」
「17歳のミニに、会いたいって。」
もやりと、心で何かが疼く。
うっすらと頭の中で響いた声は、どこかで聞いたことがある声。
―会えるもんなら、会ってみなよ。きっと、17歳の僕も、キュヒョナを好きになるから。
それは、聞いたことのある様でない、自分自身の声。
「ねえ、ミニ。僕のこと、好きになった?」
「なっ!!」
「ミニが言ったんだよ。17歳の自分も、キュヒョナを好きになるって」
心にかかった雲が晴れていく。
ああ、そういうことだったのか。キュヒョナに感じたこの気持ちは。
惹かれている。それでけでは、言い表せないこの気持ちは。
「ちゃんと、好きになってくれたでしょ?」
「…なんだよ、その自信」
「だってミニが言ったんだもん。26歳のミニが。」
好きになったよ、ちゃんと。
ソンミンは問いかける。キュヒョンに対してではなく、26歳の、多分キュヒョンと付き合っている自分に。
返事は返ってこないけど、未来の僕は、笑ってくれているような気がした。
「ねえ、キュヒョナ。もしかして、あの時助けてくれたのって…」
もしかしたら、とは思っていた。
それでも、それが嬉しいと思っていたと分かったのは、もしかしたら今かもしれない。
ソンミンは返事を待つ。
自分に笑いかける自分は、楽しそうに見守っているはずだ。
「僕はただ、ミニの恋人だから。助けるのは、当たり前でしょ?」
―好きだよ、キュヒョナ
ちゃんと伝わっているだろうか。
それとも、九年後には伝えられているのだから、いいのだろうか。
鐘の音が、聞こえる。
キュヒョンが優しく、言った。
「僕らには、結婚なんて無理だけど…」
鐘の音が響く。
今度はソンミンが、消えないように強く鳴らした。
「愛してるから、ミニのこと。」
―もしかしなくても、キュヒョナは、この言葉を伝えに、会いに来たのかもしれない。
「またね、ミニ」
キュヒョンの背中が遠くなる。
美しく伸びるバージンロードを歩くキュヒョンの背中は、どこか懐かしかった。
ソンミンはまた、鐘を鳴らす。
どこからか、ブラックコーヒーの香りが入り込んできて、鐘の音と共に教会を満たす。
鐘の音は、ほろ苦い香りと一緒に、いつまでも優しく微笑んでいた。
『僕らには、叶わない夢だけど…
未来で、待ってるから―』
Black coffee end
意味もなく惹かれたり、不意に何かを感じたりするのは、そういうことなんだろう。
きっと、君と出会って、君を好きになったことも。
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教会は、すっかり人気が無く静まり返っていた。
黙ってついてきたが、思えばここに来てすることもなかった。
「ミニがさ、よく教会を見つめてるんだ」
懐かしそうに言うキュヒョンに、ソンミンは首を傾げる。
教会を見つめたことなんてないし、第一教会にあまり行かない。
どこかでぼそっと言ったかと思い記憶を辿るが、そんな記憶はない。
「僕、教会見つめたことないけど…」
ソンミンが言うと、キュヒョンはクスクスと肩を揺らして笑った。
どこか可笑しそうに、そしてもう、悲しそうではなかった。
キュヒョンに惹かれている。
それは、何故か当たり前のようにさえ感じる。
キュヒョンは一つ、大きな深呼吸をした。
「実はさ、もう、今日でここ出てくんだけど。」
「うん…」
「だから、ちゃんと言っておくから。」
キュヒョンはソンミンの手を引いて、ずかずかと教会へ入る。
やはり結婚式があったのか、ほんのりピンク色の一片の花びらが足元に寝そべっている。
そして、キュヒョンは鐘の真下に立つ。
一度見上げてから、思いっきり鐘を鳴らした。
柔らかな音色が、響いた。
「教会を見つめてたのは、九年後のミニ。」
「へ…?」
「僕らは結婚できないって言ってるのに、ずっと見つめてさ」
ますます意味が分からない。
九年後?結婚?キュヒョナは頭がおかしくなったんじゃないか?
ソンミンが難しい顔をして首を傾げていると、キュヒョンが言った。
「会いたいって、言ったんだ」
「え?」
「17歳のミニに、会いたいって。」
もやりと、心で何かが疼く。
うっすらと頭の中で響いた声は、どこかで聞いたことがある声。
―会えるもんなら、会ってみなよ。きっと、17歳の僕も、キュヒョナを好きになるから。
それは、聞いたことのある様でない、自分自身の声。
「ねえ、ミニ。僕のこと、好きになった?」
「なっ!!」
「ミニが言ったんだよ。17歳の自分も、キュヒョナを好きになるって」
心にかかった雲が晴れていく。
ああ、そういうことだったのか。キュヒョナに感じたこの気持ちは。
惹かれている。それでけでは、言い表せないこの気持ちは。
「ちゃんと、好きになってくれたでしょ?」
「…なんだよ、その自信」
「だってミニが言ったんだもん。26歳のミニが。」
好きになったよ、ちゃんと。
ソンミンは問いかける。キュヒョンに対してではなく、26歳の、多分キュヒョンと付き合っている自分に。
返事は返ってこないけど、未来の僕は、笑ってくれているような気がした。
「ねえ、キュヒョナ。もしかして、あの時助けてくれたのって…」
もしかしたら、とは思っていた。
それでも、それが嬉しいと思っていたと分かったのは、もしかしたら今かもしれない。
ソンミンは返事を待つ。
自分に笑いかける自分は、楽しそうに見守っているはずだ。
「僕はただ、ミニの恋人だから。助けるのは、当たり前でしょ?」
―好きだよ、キュヒョナ
ちゃんと伝わっているだろうか。
それとも、九年後には伝えられているのだから、いいのだろうか。
鐘の音が、聞こえる。
キュヒョンが優しく、言った。
「僕らには、結婚なんて無理だけど…」
鐘の音が響く。
今度はソンミンが、消えないように強く鳴らした。
「愛してるから、ミニのこと。」
―もしかしなくても、キュヒョナは、この言葉を伝えに、会いに来たのかもしれない。
「またね、ミニ」
キュヒョンの背中が遠くなる。
美しく伸びるバージンロードを歩くキュヒョンの背中は、どこか懐かしかった。
ソンミンはまた、鐘を鳴らす。
どこからか、ブラックコーヒーの香りが入り込んできて、鐘の音と共に教会を満たす。
鐘の音は、ほろ苦い香りと一緒に、いつまでも優しく微笑んでいた。
『僕らには、叶わない夢だけど…
未来で、待ってるから―』
Black coffee end
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